📖 『クレー ART BOX ――線と色彩――』(日本パウル・クレー協会 編)
「ぼくは手を休める。ぼくのなかで奥深く、優しくわきおこる思いがある。ぼくはそれを感じる。苦労もなく自信に満ちあふれた何かを。色彩がぼくをとらえたのだ。ぼくの方から追いかける必要もない。色彩がいつでもぼくをとらえるだろう。これが幸福と言うものだ。色彩とぼくはひとつになった。ぼくは絵描きなのだ。」
ある日のパウル・クレーの日記の一部である。クレーの名が付く展覧会には数回足を運び、美術評論家が評する線と色彩に見惚れたものだ。クレーは「色彩と線の魔術師」と称される。色彩を理論的に学ぶことは可能だが、センスの有無は決定的である。センスとは何かを語ることはできないが、「色彩と自分がひとつになる」という感覚なのだろう。
📖 『色彩――色材の文化史』(フランソワ・ドラマール/ベルナール・ギノー 著)
「古くから使われている色材は、しばしば時とともに名前を変えている。」
色彩の名はややこしい。色材由来のものもあれば風土文化に因んで命名されることもある。色材を見たままに名付けた「アズルム」(青)という名が、近世以降は「ウルトラマリンブルー」とか「ラピスラズリ」と呼ばれるようになった。ウルトラマリンは和名で「群青」、ラピスラズリの和名は「瑠璃」。両者はまったく同じではないし、それぞれの色も印刷やディスプレイによって微妙に異なって見える。「イエローオーカー」という色の和名は「黄土色」であるが、ことばでは表現しづらい色味の違いが感じられる。
📖 『色彩のアルケオロジー』(小町谷朝生 著)
「上代のことばからもっとも色彩の性質を表していることばを選べと言われたならば、私はためらいなく“にほひ”を採るだろう。にほひが、色彩作用の本質をもっともよく表していることばと考えるからである。」
著者は『万葉集』から大伴家持の次の一首を紹介する。
春の苑 紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つをとめ
においと色が重なり、花が香って光景が絵のように見えてくる。赤ワインを香りと色で味わう様子を思い出す。赤ワインは熟成が進むにつれ、紫→オレンジ、ルビー→ガーネット→レンガ色に変化する。これら色彩とアロマは別物ではなく一体である。












