空気の読めない「お邪魔します」

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 「お仕事中、お邪魔します。私、・・・・・・」

 ドアをトントンと叩く音が聞こえ、「ハイ」と応答したら、ドアが開いて、その営業マンは喋り始めた。よくある切り出し方、よくある口調、よくある服装の立ち居振る舞い。こっちは中断されたくないPC作業の真っ最中だったので、上目づかいで「何か?」とぶっきらぼうに尋ねる。

 「突然の訪問者」は冒頭の1、2分は丸暗記しているので、「ご用件は?」と聞こうが「何か?」と聞こうが、お構いなく話し続ける。「こんなやり方で成果が上がるのだろうか・・・・・・」―あまり頻繁に飛び込みセールスがやって来て仕事の邪魔をしてくれるので、10年ほど前に『セールスマンの通信簿―うちのオフィスにやってきた50人の話し方・売り方』という本を真剣に書いてみようと思ったくらいだ。

 彼らのステレオタイプな文言は次の通り。

 1. 「私、このたびこの地域の担当になりましたので、ご挨拶にうかがいました」(地域の担当? 知らない会社の人事異動事情を知ったってしかたがないじゃないか)

 2. 「ご多忙だとは存じますが、少しお時間いただけますでしょうか?」(察しの通り忙しいので、パンフを置いていってくれればよろしい)

 3. 「私、新入社員研修の一環で、企業訪問させていただいています」(つまらないことさせるね、どこの研修会社?)

 4. 「代表者の方は、いらっしゃいますでしょうか?」(あ、代表は出掛けています、と代表のぼく)

 彼らに共通する特徴は、社交辞令的でフォーマル過剰、にもかかわらず空っぽのテンションだけが高い。少し興味を示す振りをして話しかけても、カジュアルトークができない。何よりも苛立つのは、用件が後出しであり、やっと用件を言い出したと思ったら、その用件そのものがまったく不明であることだ。

 どう好意的に解釈してあげても、新人の飛び込みセールスにプラス面が見えてこない。ガンバリズムの醸成? そうかもしれないが、それって顧客には関係ない。

 「私のプロフィール」なるものを置いていった別のセールスマンがいたそうだ。彼が訪ねたのは、どう見たって、資産のない小さな小物のお店である。その店に「資産運用」の話である。そのプロフィールにはこう書かれていた―「先の読める人間を目指しています」。おいおい、そんなことよりも、当面の空気を読める人間になりなさい! 

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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