Before-Afterの入門企画術

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 初心者向けの企画研修機会がそこそこある。年間20回はあるだろう。企画には定型がなく、どこを起点に指導するかにいつも頭を悩ませる。企画研修のカリキュラムは過去10年で7回近くバージョンアップしてきた。「アップ」になっていると信じている。

 テーマを絞れ、コンセプトを一言で表わせ、企画書は一枚(いや、一行という超手抜きもある)、構成はシンプルに・・・・・・など、企画の仕事には簡素化ハウツーが多い。そんな悪銭身につかずの心得ではダメ? そんなことはない。むしろ、奥深い仕事だからこそ、そうしなければならぬと思っている。

 突き詰めれば、企画が価値をもつかどうかは、目新し改革にある。

 目新しさ。すなわちテーマもタイミングも旬でなければならない。どこかで誰かがすでにやっていることを企画とは呼ばない。少しくらい模倣があっても大目に見るが、根底にある提案は企画者のオリジナルであるべきだ。

 改革。「現状よりもよくなる」という仮説とアクションのシナリオが企画書に書かれていなければならない。その企画を実施すれば、現状の問題が解決するか、しかるべき理想が実現するか、メリットや便益が増えるか―これらのいずれかを証明するものでなければならない。

☆ ☆ ☆

 指導したいことは山ほどある。だが、焦ってはいけない。「その企画を試みたら、現状(=Before)よりもベターな将来(=After)が約束できるか?」と、演習をしている初心者たちに尋ねる。何も変わらない、むしろ悪くなるというのでは話にならない。

 Beforeのステージでは現状の短所を分析する(もちろん、よいものはよいと評価せねばならないので長所も分析する)。正確に言うと、分析だけでは不十分で、「内因性」という「短所の指摘と、その短所の主たる原因」を探る。これがうまくいけば、少なくとも「現状はそのままに放置してはならない」という企画の動機が正当化できることになる。

 「いま使っている水性ボールペンは書き味が悪い、よくインクがかすれる」などの短所を挙げる。次いで、書き味が悪い原因、インクがかすれる原因を分析する。これらの原因はすべて「その水性ボールペン」に内因するものであること。つまり、紙が原因であったり書き手の癖が原因であってはならない。これでBeforeのゆゆしさがクローズアップできる。

 Afterのステージでは短所の修正を提示する。原因の解消である。小幅の修正で済まないのなら、代替策を提案することになる。「紙と書き手を選ばない書き味とインクの長持ち・スムーズさ」がAfterの見せ場。これによって、After-Beforeの差が歴然となり、「After<Before」が証明できることになる。

☆ ☆ ☆

 企画シナリオの基本はこれだけである。企画意図や提案骨子などは後で書けばよろしい。まずは、(1) Beforeに対するAfterの目新しさ、(2) Beforeを改革したAfterは短所が少なく長所が多い、という二点を押さえる。

 Beforeの分析から入ると時間がかかったり逆にわかりにくくなったりするのではないかという懸念がある場合は、思い切って理想のAfterを掲げることもある。流れがAfter→Beforeの順になっても、企画のねらいは同じで、両者の歴然とした差を描きAfterのBeforeに対する優位性を説く。

 えらく大袈裟な話をしてきたようだが、仕事から離れた私生活ではみんなこうしてBefore-Afterを直感的に天秤にかけている。いつも飲んで帰っているが(Before)今日はまっすぐ帰ろう(After)、ソファを中心にリビングをレイアウトしているが(Before)グリーンを主役にしてみてはどうか(After)・・・・・・。小さくて身近なテーマを拾ってBefore-Afterに習熟してみよう。企画が親しみやすい存在にはなってくれるだろう。企画とは「画を企む」。スケッチの数をこなすのが上達への近道である。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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