ランチタイムの選択肢

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 できれば弁当持参のほうが迷わないでいいというのがホンネだ。しかし、ランチのふいのお誘いが少なくないため、弁当を食いそびれてしまうことがあった。その弁当を夕食にするというのはちょっと情けないし、この時期だと食中毒すらありえる。というわけで、ランチはほとんど外食である。

 同じ店に週に二回も三回も通わない性分なので、オフィス近辺の食事処はだいたい知り尽くしている。時間があれば一駅くらい平気で歩いて行く。目当てがあるわけではなく、新しい店を探すことも多い。店構えと店名とメニューと料金で推理し、当たり外れに一喜一憂するが、ぼくの選ぶ店は当たりが多い。知人友人も認めてくれている。

 それにしても、何十年にもわたってランチタイムに少考したり迷ったりしてきたわけだ。出張時にはさっさと決められるのに、地元ではついつい選択の岐路に立って自虐的に迷いたがる傾向がある。

 お決まりの店に毎日通い、まったく悩むことなく日替わり定食一本主義のM。誰が何と言おうと、ビッグマックとコーラ以外を口にしなかった、かつての同僚アメリカ人のR。この二人を思い浮かべると、心中複雑だ。彼らの確固たるランチ哲学を羨む一方で、それじゃまるで餌ではないかと皮肉りたくもなる。

☆ ☆ ☆

 どこで何を食すかに迷うのはやむをえない。自分がそれを内心望んでいるからだ。しかし、そうして注文した後に、今度は店側からオプションを突きつけられて、さらに迷ったり不条理な選択肢に首をかしげさせられたりする。

 そのランチはセットメニューで、たぶんこの店の定番である。うどん、コロッケと鶏のから揚げ、ポテトサラダ、ライスの組み合わせだ。メニューを見て「これください」で注文完了。と思いきや、それで終わらない。

 うどんは「そば」に変更でき、しかも「温」か「冷」を選べると言う。温かいうどんのつもりで頼んだが、冷やしうどん、かけそば、ざるそばという三つの選択肢が増えた。しばし迷って、ざるそばにした。「うどん・温」を「そば・冷」に変えるのは二重の変更で、あまりにも節操のない自分に呆れる。

 さらに、「生卵か味付け海苔、どっちにしますか?」と奇妙なことを聞いてくる。

 トッピングみたいなものがこの定食にはついてくるのか。まったくの想定外である。そんなものを客に選ばせることはない。両方ともつけたらいいではないか。しかもだ、しらす大根おろし vs 冷奴とか、バニラアイス vs 抹茶アイスなら両者拮抗しているが、生卵と海苔は選択肢としてバランスが悪い。

 生卵が苦手なお客さんのためのオプションが味付け海苔? たぶんそうなのだろう。それはともかく、バリエーションやオプションが豊富であることがサービスともかぎらない。こっちは店と品物を選ぶまでに十分に迷ってきているのだ。「顧客の選択をこれ以上ないくらい容易かつわかりやすくしてあげる」というシンプルマーケティングの要諦を思い出した。

 今日のランチは迷わずに上うな丼にしよう。少なくとも、温か冷か、生卵か味付け海苔かで迷わされることはなさそうだ。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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