ギャグのような嘘

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 夏風邪が長引いて約10日。仕事をしたり外出したりと普段の生活に支障はない。のどのエヘン虫が咳を仕掛ける。それが少し苦痛だ。

 あまり抗生物質系の薬には手を出さないことにしている。そこで医薬品のドロップをせっせと舐めてみるが効かない。「痛いのど、せきに効くドロップ」と箱には書いてあるのだが、効かない。これって嘘つき広告にならないんだなあ。

 いろんな嘘を聞いたり、嘘つきな人と出会ったり、自ら他愛もない嘘をついたり、嘘も方便とか何とかこじつけたりもしたことがある。でも、「激うまラーメン」が不味くても虚偽罪で訴えられないんだなあ。「頑張ります!」と言いながら決して頑張らない社員を業務不履行でクビにはできなんだなあ。まあ、そんなルーズさのお陰で、「この講座で能力パワーアップ!」とアピールする自分自身もだいぶ救われてはいるけれど・・・・・・。

☆ ☆ ☆

 その昔、職業的嘘つき(つまり詐欺師)ではなく、とてもノーマルな仕事をしていながらよく嘘をつく人がいた。ビルの掃除のおばさんである。

 ぼくより30歳ほど年上だったと思う。暗い人ではなかったが孤独な様子だった。廊下で会うたびに労をねぎらい少し立ち話をしたりした。この人の話を数ヵ月ほど聞いてあげた結果、人付き合いが少ないため「嘘の在庫」をあり余るほど抱えていることがわかった。

 おばさんの断片の話を拾ってつなぎ合わせていくと、「五年前に亡くした主人を一年前に入院させ、しばらくして手術させ、その一週間後に見舞い、さらに次週に退院させ、その次の週にもう一度亡くし、先週の日曜日に生き返らせて一緒にお芝居を見に行った」というような一身上の都合が出来上がる。

 目と目が合って、「今朝は早いですね」とでも声を掛けようものなら、もうどうにも止まらない。「朝が早いと言えば、私なんか若い頃には牛乳配達と新聞配達をしていましたよ」。これに「ほほぅ」とでも相槌を打つと、「今ではお掃除のおばさんだけれど、昔は中学の教師だったし、その後は大手の保険会社で女性スタッフの指導員もしていました」と続く。

 共用部分の灰皿を掃除しながら、「火には気をつけないとね。昔、市民消防団の団長をやっていた頃には夜遅くまで巡回していました」。「へぇ、そうなんですか?」と応じれば、「体力が必要だったけれど、病院の婦長の経験もあったから健康には自信がありましたよ」とエンドレス・キャリアウーマン・ストーリー。

 トータルすれば、このおばさん、主人を数回亡くしており、職業は10数回変わり、子どもが20数人いて、本人は10種類くらいの病気にかかり延べ数十年間入院生活を送ったことになる。最初の二、三回はユニークな人だと思っていたが、あまりにも短期間のうちに「嘘八百」をさばいてしまった。冗談と嘘は休み休み言うのが正しい。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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