ミケランジェロ広場から街の景観を楽しみ、直線なら250メートルほどの川岸までジグザグ状に下っていく。振り向けば要塞へと続く城壁跡や門が見える。アルノ川沿いの通りを西へ歩くと、グラツィエ橋。ここからさらに400メートルのところにヴェッキオ橋が架かっている。フィレンツェを訪れるすべての観光客は必ずこの橋を渡る。日が暮れたあと、西200メートルのところに架かるサンタ・トリニタ橋を眺める。ライトが川面に溶け込んでほどよく滲む夜景にしばし立ち止まる。
「食とワインはトスカーナにあり」と称してもいいだろう。トスカーナの州都フィレンツェは旨いものへの期待を裏切らない。逆に言えば、食、とりわけ肉料理に好き嫌いの多い旅人にとってはフィレンツェの値打ちは半減する。牛、豚、鶏は当然として、サラミと生ハムのアンティパスト(前菜)はほとんどすべての店で定番。羊、ハト、ウサギ、ヤギもある。
街中には屋台がある。そこで売っているのは「トリッパ(trippa)」(牛の胃袋ハチノス)の煮込み。これをパニーニにはさんで頬張る。味付けはトマトソースとバジルソースの二種類があり、いずれもニンニクがたっぷりきいている。このような屋台出身のオーナーが始めた「トスカーナ風ホルモン料理店」をランチタイムに訪ねた。「トリッペリーア(tripperia)」と呼ばれ、文字通り「牛の胃袋料理専門店」という意味である。乳房のグリル盛り合わせやホルモンの熱々コロッケなどの店自慢の料理を数種類。個人的には臓物は大好物で、クセがあっても平気だが、この店の料理はとても洗練された味に仕上がっていた。食べるのに夢中で写真を撮り忘れたのが残念。
しかし、何と言ってもフィレンツェ随一の名物は「Tボーンステーキ(bistecca alla fiorentina)」だ。重さ700グラムなど当たり前で、店によっては1キロという大迫力もある。二人や三人で頼むと、これ一品でおしまい。他の料理には手を出せなくなってしまう。というわけで、肩ロースを焼いて少量をあらかじめスライスしてある「タリアータ(tagliata)」をレアで頼む。ちなみに、レアはイタリア語で"al sangue"。これは「血のしたたる」という意味である。
☆ ☆ ☆
![]()
![]()
〔左〕北岸から眺めるヴェッキオ橋。たしかに橋なのだが、店舗が入った建物の構造になっている。〔中〕川岸の飾り柱に旅行者が記念に錠をかけていく。〔右〕ヴェッキオ橋から西へ二つ目の「カッライア橋」。滞在中はこの橋を使って歴史地区へ足を運んだ。
![]()
〔左〕トスカーナ料理を堪能した"Il Guscio"。〔中〕ポテトを添えたステーキのスライス。現地では「少量」だが、ボリュームたっぷり。〔右〕ヴェッキオ橋から眺める黄昏時のサンタ・トリニタ橋。
〔左〕アパートからすぐ近くの城壁跡。朝の散策にはもってこいのロケーション。〔右〕アパート前の道を進むとサン・フレディアーノ門。夜間の人通りは少ないが、バイクがビュンビュン飛ばしていくので要注意。




コメントする