週刊イタリア紀行No.15 「ルッカ(1) 城壁とプッチーニ」

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 どの季節にその街を訪れるか。一人で行くか、誰かと行くか、団体で行くか。そこにどのくらい滞在するか。街のどこを見るか。他のどの街を訪問したあとにそこに行くのか、その街の次に訪れる街はどこなのか。条件によって街の印象は大きく変わる。そう、街との出会いは運命的なのである。

 数え切れないほどの特徴の組み合わせがあるにもかかわらず、紀行文はごくわずかな一面しかとらえ切れない。街の印象をしたためるのは個々の旅人の自由だ。そして、旅人の印象はたぶん偏見に満ちている。おっと、これは批判ではない。国勢調査員のような旅人であってはいけない、という意味だ。ルッカ(Lucca)についてぼくがこれから綴る内容も、実体を写実的に描写するものではなく、印象のスケッチにすぎない。

 前回、前々回のアレッツォと同様、ルッカが定番のイタリアツアーに入ることはまずない。オプショナルツアーとしても考えられない。フィレンツェから西へ準急で約2時間―これが、この街に出掛けてみようと思った「ホップ」。オペラ『蝶々夫人』のプッチーニの生まれ育った街―これが動機の「ステップ」。最後の決め手になった「ジャンプ」は、ルッカが戦争を知らない、イタリアでも稀有な街であることだった。思いを三段跳びさせないと、ルッカに行ってみようと決断するのは難しい。

 ルッカはトスカーナ州の北部に位置する、ローマ時代から続く歴史ある街だ。12世紀初頭に自治都市になり、16~17世紀に城壁が建設された。今も旧市街は高さ12メートルほどの城壁に囲まれている。完璧な城壁があったから戦火に巻き込まれなかったのではなく、まったく偶然の幸運だったようだ(地理的に恵まれたという説もあるが、ぼくにはよくわからない)。

 ルッカの駅に着くと、通りを挟んですぐに城壁が見える。遊歩道に沿ってドゥオーモから街へ入り、ナポレオン広場、サン・ミケーレ広場、中世の家、プッチーニの生家、円形競技場跡など主だったところを徒歩でくねくねと辿っても2キロメートルにも満たない。なにしろ街を取り囲んでいる城壁の長さが約4キロメートルだから、とても小さな街なのである。それでも縦横に伸びる細い通りで迷ったり、プッチーニの生家にはなかなか到達できなかった。いろんな人に尋ねながら歩いた。ルッカの人たちはみんな笑みをたたえた親切な人ばかりであったが、プッチーニの生家を示す指の方向はみんな違っていた。

☆ ☆ ☆

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Toscana1 245.jpgToscana1 249.jpg〔左〕ルッカの駅から一本大きな通りを渡ると城壁が見える。サン・ピエトロ門をくぐり城壁に上がる。〔中央〕城壁の上は幅7、8メートルの遊歩道になっていて街を囲んでいる。〔右〕城壁の外側はグリーンのベルトがびっしりと埋め尽くされている。

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〔左〕大聖堂(ドゥオーモ)は「カテドラーレ・ディ・サン・マルティーノ」。聖マルティーノはルッカの守護聖人である。ロマネスク様式の1階ファサード部分の3つの大きなアーチが特徴とされる。〔右〕ファサード前がサン・マルティーノ広場。この日のルッカは、課外授業らしい中高生の団体や小グループの観光客で賑わっていた。いつもこんな賑わいなのだろうか。  Toscana1 213.jpg Toscana1 216.jpg Toscana1 217.jpg

〔上〕ナポレオン広場。戦争を知らないルッカだが、19世紀初頭にナポレオンの妹エリーザが収める公国になった。広々としたこの広場が気に入り、ピザを買ってきてここでランチ。〔左〕ファサードがドゥオーモと似たロマネスク様式のこの建物は、サン・ミケーレ・イン・フォロ教会。フォロ(foro)というのは公共広場跡のこと。〔右〕街と市民の生活の中心となるサン・ミケーレ広場。この広場がローマ時代の遺跡を利用してつくられた。

Toscana1 236.jpg Toscana1 241.jpg〔左〕街角で見つけたカフェは、その名も「カフェ・プッチーニ」。〔右〕サン・ミケーレ広場から100メートルほど歩くと、プッチーニの像が現れた。

Toscana1 244.jpg Toscana1 243.jpg〔左〕最後に出会ったおじさんが教えてくれたプッチーニの部屋。〔右〕大理石の銘板にもしっかりそう書かれている。 

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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