ルッカの駅で少し慌てる体験をした。駅に着くと何はさておき、ぼくは帰りの時刻表を確認して復路の切符を買い求めることにしている。ルッカからフィレンツェまでの準急料金は4.8ユーロ。10ユーロ札を自販機にすべらせボタンを押すと、切符は出てきたがお釣りが出ない。釣銭ボタンめいたものを押してもダメ(あ~あ、イタリア特有の故障。これは面倒なことになるぞと覚悟する)。
よく見ると切符の下にもう一枚切符が・・・・・・。実は、切符ではなく、釣銭の額が印字された金券であった。これを窓口に持っていき、クレジットカードの売上票に記入するようにサインをして現金に換えてもらうのである。面倒臭いが、お釣りの硬貨が出てくるよう神に祈らねばならないイタリアのローテク券売機ならではの工夫と言える。外国人旅行者にとって鉄道駅は想定外の出来事に満ちている。降り立つ駅ごとに特徴があり、軽い緊張感を覚える。とはいえ、ハプニングは異文化に遭遇する貴重な機会であり体験である。
さて、プッチーニの銅像を目当てに、二つの通りを往来してみた。フィッルンゴ通りとグイニージ通りだが、行ったり来たりしたので、手元の写真の光景がどちらのものかよくわからない。どちらも中世の印象を色濃く残しており、煉瓦仕上げの建物の外壁は古色蒼然としている。戦争がなかったから14世紀がそのまま今に生きているのだろうか。試行錯誤したあげく、どっちを通ってもローマ時代の円形劇場に辿り着くことがわかった。
メルカート広場の一画にローマ時代の古代円形劇場跡を利用した集合住宅がある。建物が円形の空間の周囲に「丸く」びっしりと建っているのは奇観と形容すべきか。ルッカ独特の景観である。円形劇場から東西へ少し行けば、有名な旧邸宅があるのだが、敢えてそちらへは向かわず、ぼくにふさわしい裏道を選んで帰路についた。
メジャーではないだろうが、ルッカも知る人ぞ知る観光地の一つ。ツアーの団体も見られたが、観光客を特に意識した街並みや店づくりはしていない。通りが狭く建物が古いせいだろうが、中世の風情を保ちながらも生活感を漂わせる街並みであった。駅に戻る途中、城壁跡である遊歩道に上がってしばし散策。緑地帯に囲まれた中世の街がとてつもなく希少な存在に見えた。 《ルッカ完》
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〔左4点〕狭い通りが余計に中世の面影を濃くする。店構えもこじんまり。
〔上4点〕劇場跡のメルカート広場の中央に立って、周囲に円形状に建ち並ぶ建物をぐるぐる回りながら撮影。ここには1830年までローマ時代の観客席がそのまま残っていたらしい。観客席部分に建物が建っている。地下は古代のままなので、まさにローマ時代の上に現在が暮らしているという構図。




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