週刊イタリア紀行No.18「サン・ジミニャーノ(2) オンリーワン体感」

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 トスカーナ州の都市を一ヵ月ほどかけて丹念に周遊すれば、それぞれの個性を繊細に感知できるのだろう。同じ中世の佇まいであっても面影の残り方は異なっている。西洋中世の時代の建築や都市の専門家なら現場で即座に街の差異を認知できるに違いない。

 ぼくなんかはそうはいかない。万が一細い通りが交差する街角に突然ポツンと置かれたら、そこがフィレンツェかシエナかピサか即座に判断できる自信はない。もっと知識を深めたいと思ってはいるものの、残念ながら、トスカーナ地方全般、とりわけ都市の歴史や建造物に関してぼくはまだまだ疎(うと)い。しかし、投げ出された場所がここサン・ジミニャーノなら、おそらく言い当てることができるだろう。それほど、この街はトスカーナにあってオンリーワンの様相を呈している。

 地上にいるかぎり、煉瓦の建物や壁の色や石畳をじっくり眺めても街の特徴はよくわからない。わからないから、高いところに上って街の形状を見たくなる。だから、塔があればぼくは迷わず上る。高いところに上るのは何とやらと言うが、塔は無知な旅人の視界を広くして街の全貌を知らしめてくれる。

 だが、現存する塔のほとんどは700年以上の歳月を経て老朽化している。市庁舎の博物館と並立するトーレ・グロッサは安全を保証された数少ない塔の一つだ。高さは54メートルほどなのでトーレ・グロッサ(巨塔)とは大げさだが、小さなサン・ジミニャーノの街全体はもちろん、周辺の田園や丘陵地帯を一望するには十分な高さである。そこの切符売場でもらった 『サン・ジミニャーノの宝物』と題されたB5判一枚ものの案内。何となく気に入っているので額縁に入れて飾っている。

 見所を一ヵ所見逃した。というか、見送った。中世の魔女裁判をテーマにした『拷問・魔術博物館』である。当時使った拷問装置をそっくりそのまま展示している。残酷・残虐のイメージを前に好奇心は萎えてしまった。「生爪剥がし」や「鉄釘寝台」を見ては、その日の夕食にまで影響を及ぼしかねない。ここはパスして城壁周辺を散策することにした。

☆ ☆ ☆

Toscana1 094.jpg Toscana1 104.jpg Toscana1 107.jpg〔左〕トーレ・グロッサの塔から眺める三本の重なる塔。〔中央〕現存する塔の数は15本、14本、13本と資料によって異なる。教会の鐘楼は一本として付け加えるのだろうか。〔右〕塔の上ではいびつに形を変えた鐘が無造作に置かれていた。Toscana1 103.jpg Toscana1 100.jpg 

〔左〕光景におさまっているのはわずか3本の塔だが、13世紀の頃には72本あったとされる。現在の高層ビル群になぞらえて、天へと聳立を競った塔の街を「中世のマンハッタン」と呼ぶ人もいる。〔右〕「トスカーナの田園地帯」という言い方をするが、平野部はすこぶる少なく、牧草地なども起伏の波を打っている。この写真のような風景が街の周辺の丘陵地帯でよく見られる。

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〔左〕塔のほぼ真下に見える広場と住宅。〔右〕街の特産品や名所をコンパクトに解説するパンフレット。   Toscana1 108.jpg Toscana1 109.jpg     

〔左〕中央やや下に井戸の見えるチステルナ広場。街のすぐ背後に緑が迫っている。古色蒼然と言うしかない。〔右〕井戸周辺をクローズアップ。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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