今年の3月なのでまだ記憶に新しい。ローマのヴァチカン近くのアパートを午前8時に出発。地下鉄レパント駅まで10分ほど歩き、ローマの終着駅テルミニへ。鉄道に乗り換え普通列車で1時間20分、オルヴィエート (Orvieto) に着いた。
オルヴィエート。ワイン好きなら知っているか聞いたことがあるに違いない。ローマから近いにもかかわらず、たとえば『地球の歩き方 ローマ版』にこの街の情報はない。掲載されているのは『フィレンツェとトスカーナ版』のほうだ(フィレンツェからオルヴィエートは倍以上時間がかかる)。ローマ版ではティヴォリやヴィテルボ、フラスカーティ(ここも白ワインで有名)などを紹介している。なぜオルヴィエートをわざわざフィレンツェ版のほうに編集したのだろうか。
イタリアを代表するゴシック建築のドゥオーモと安価で上質の白ワイン―オルヴィエートが自慢できるのはこの二つだけ。しかし、この二つ以外に何も望まなくてもいい。下手に何でもかんでも揃っていたり中途半端な特徴を備えているよりは、「これしかない」と言い切れるほうが「地ブランド」に秀でることができる。欧米人観光客は美しいファサードのドゥオーモ前広場にたむろしワインショップを訪れる。やはりその二つがお目当てなのだ。
ローマ滞在中にオルヴィエートに出掛けるつもりではあった。しかし、ぼくの動機は大それたものではなく、白ワインの里を見てみようという程度だった。オルヴィエートの駅からケーブルカーを乗り継いで到着したのはカーエン広場。先を急ぐならバスか徒歩でドゥオーモへ行く。しかし、広場の少し先の展望スポットに寄って眼下に広がる景色を楽しんだ。崖っぷち状の丘陵地の街なので眺望がとてもいい。
ドゥオーモに着いた。キリスト教にも教会の建築様式にも知識や教養を持ち合わせていないが、あちこちの街で見てきたデザインとの違いはわかる。金色とピンク色を織り束ねたような模様と繊細かつおごそかなファサードのデザインに目を奪われる。座り込んでうっとりと眺めている人たちもいる。ぼくもしばし足をとどめた。ゆっくり歩きながらメインのカヴール通りに入り市庁舎のあるレプッブリカ広場へ。道すがら、あるわあるわ、名産の白ワインを所狭しと展示しているエノテカ (enoteca) 。イタリア語でワインショップやワイン庫を意味する。2本か3本でワインが箱にセットされているのも珍しいが、もっと驚いたのは値札の数字であった。
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〔左〕ケーブルカーの出発駅。〔右〕遥か遠方を見渡せるパノラマ図。
〔左〕1290年に着工して完成まで三百年以上を要したドゥオーモ。
〔右〕ディテールまで見事なまでの浮き彫り。
〔左〕ドゥオーモ広場からカヴール通りへ。〔右〕店の外壁一面には絵皿が飾りつけられ、観光客の目を存分に楽しませてくれる。




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