レオナルド・ダ・ヴィンチを語る

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 一昨日の夕方、"熱気あふれる"書評会を主宰した。数えて三回目。今回は十人が参加した。語ることばや想いから熱気はほとばしったが、テーブルからも立ち上がった。というのも、場所が鉄板焼の店だったからである。前二回と違って、今回は書評会と食事会を同じ場所で開催した次第だ。

 一応6月まで続ける予定で1月から始めた。そのうち一度はルネサンスがらみの書物を書評するつもりにしていた。ルネサンス全般を取り上げると持ち時間10分や12分ではきつい。そこで、さほど思案することなく人物をテーマに選び、さも必然のようにレオナルド・ダ・ヴィンチに落ち着いた。そこから先で少し迷った―最近読んだ『モナ・リザの罠』(西岡文彦)にするか、『君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか』(布施英利)にするか、はたまただいぶ前に読んだレオナルド本人の『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』にするか・・・・・・。

 結果的に『君は・・・』を取り上げることにした。レオナルドに関する知識の少ない人には、著者の言わんとすることがよく伝わりそうな気がしたからである。宇宙をかいま見た男・・・・・・マクロコスモス(宇宙)とミクロコスモス(人体)を関係づけ対応させた話・・・・・・生前は音楽家としての名声のほうが画家よりも上だったというエピソード・・・・・・・などは興味をそそる。

☆ ☆ ☆

 中高生の頃に絵画に打ち込んだ時期があって、何もわからぬままレオナルドやルネサンス期の絵画に魅せられた。とりわけ「輪郭線」を引かずに絵の具の明暗のコントラストだけで描いてみせるスフマート技法には目を見張った。何年か前に水彩で試みたが、人に見てもらえる出来上がりにはほど遠い。

 レオナルド自身の手記を読めばわかるが、絵画技法にとどまらず、この天才は新しいテーマを次々と追究していった。手記の冒頭には「先人たちはことごとく有用な主題を選んでしまった、だから自分に残されたのは市場の値打ちのない余りものみたいなテーマばかりだ、だが、それらを引き取って何とかしてみよう」―というような、ニッチ志向の趣旨が書かれている。シニカルな謙遜であり孤高の精神が滲み出る。

 文章の切れ味にもこれまた感心させられる。哲学的メッセージあり、斬新なアイデアあり、鋭い視点あり・・・・・・しかも、ほとんどが自信を漲らせた断定調なのだ。拾い出すとキリがないが、ぼくを反省させ、しかるべき後に心強くしてくれた箴言(しんげん)が二つある。

 一つは、「権威を引いて論ずるものは才能にあらず」。若い頃、引用文だらけの書物にコンプレックスを抱いたものだった。「よくもこれだけ調べているものだ」と己の勝手思考を責めたりもした。しかしだ、「偉い誰々がこう言っている」などという引用そのものは、努力と熱意ではあるだろうが、才能なんぞではない―こうレオナルドは言ってくれているのである。そんなことよりも自力で考えて論じなさいと励ましてくれている。

 もう一つの章句もこれと連動する―「想像力は諸感覚の手綱である」。きみはいろいろ見聞したり触ったりするだろうが、そうして感知する物事や状態の大きさ、形、色や味、匂いや音・声などをつかさどっているのがイマジネーションなんだ、それなくしてはきみの感覚なんてうまく機能しないぞ―というふうにぼくは解釈している。観察や体験なども想像力でうまくコントロールしないと功を奏さない。ぼくが企画の研修のプロローグで想像力や発想についてかたくなに語り続けるのは、このことばが大きな後押しになっているからだ(なお、ぼくが出会った経験至上主義者で想像力が逞しかった人は一人もいない)。

 おっと、満悦厳禁。レオナルド・ダ・ヴィンチという権威を引いても、これはゆめゆめ才能ではない。いや、もしかしたら、天才レオナルドならこう言ってくれるかもしれない―「わしをそこらに五万といる権威と同じにせんでくれ。わしが綴ったことばで使えるものがあれば何でも使ってくれたらいい。五百年後もまだ光が失せていないのなら・・・・・・」。 

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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