「カンタンな仕事」はタブー

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 会社を創業したのは1987年12月。オフィス探しと同時に、定款や登記の準備に追われたのが前月。すでに起業していた大学の後輩に税理士さんを紹介してもらった。さらに、その税理士さんが司法書士さんを紹介してくれた(これ以降は面倒なので、「さん」づけをやめる)。 

 何の書類か忘れたが、手書きの原稿か何かをその司法書士に渡して仕事を依頼した。「ちょっと急ぎなんで・・・・・・。すみませんね」と言うと、「いえいえ、ワープロに書式が入ってますから、事務所に帰ってパパッとすれば簡単です」と対応された。これには驚いた。これではまるで「はごろもフーズのパパッとライスこしひかり」と同じではないか!? いや、それよりも簡単な作業に聞こえた。そのときの「簡単」は、カタカナの「カンタン」と表記されるべき響きであった。

 ぼくもその一人だが、弁舌や文章を生業とする人はこれを教訓にしなければならない。具体的にアドバイスを三つ差し上げよう。

 一、めったなことで「カンタンです」と口に出してはいけません。たとえ依頼されたその仕事がカンタンであっても、一度は苦渋の表情を浮かべて見せるように。

 二、要する時間を一日、いや数時間くらいかなと見積もっても、遠慮がちに「あの~、数日ほどいただいても大丈夫でしょうか?」と小声で尋ねること。つまり、相手に骨のある課題であるように感じてもらうのです。

 三、オーケーが出て納期が決まったら、表情を笑みに変えて「満足していただけるよう頑張ってみます」と答えましょう。

 具体的なモノを扱わず、ノウハウと知識という、他者からは見えない資源を使い、これまたすぐに消えてしまう音声と、吹けば飛ぶよなペーパーを納品形態とする職業人―それがあなたです。「カンタンな仕事です」と告白するのは自害にも等しいことをお忘れなく。

(続く)

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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