続・「カンタンな仕事」はタブー

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 次のようなスパムメールがぼくのところに来たが、他の人たちのアドレスにも届いているのだろうか。

 「ほぼサルでもできる軽作業で副収入が月10万円~」

 ここまでしかわからない。件名だけは見えるが、本文を開いていない。また、読む気もない。だから、その「ほぼサルでもできる軽作業」がいったい何なのかがわからない。しかしだ、この件名のコピーに関して言えることがある。すなわち、この件名コピーは挑発的でありながらも、一部の受信者たちに「いったいどんな軽作業なのか?」と思わせる訴求力を持っているのだ。それでも、ぼくは読まない。その代わり、このスパムでちょっと遊んでみることにした。

 「ほぼサルでもできる」のなら、わざわざ人間のところに迷惑メールを送りつけることもないだろう。サルにお願いすればいい。そうすれば月に10万円の報酬を払わなくても、3万円くらいの餌代で済むではないか。だが、こんな難癖をつけようものなら、メールの送り主はニタリと笑ってこう続けるはずだ。「ちょっと待ってくださいよ。わたし、サルなんて断言していません。『ほぼサル』でして、『サル』ではないんです。」 

 さらに耳を傾けるととんでもないことになる。「サルでも7、8割はできるんです。でもね、あとの2、3割はどんなに訓練してもダメ。だから『ほぼサルでもできる軽作業』なんですな。つまり、2、3割は人間の力が必要。ほんとうにカンタンな軽作業なんだけど、サルではやっぱりできないんですよ。だから、サルではないあなたの力が必要なんです。」

☆ ☆ ☆

 話は変わるが、「猫の手も借りたい」と言う。多忙な仕事があるのだが、人手が足りない。だから、猫の手でもいいからレンタルしたいということだろう。もちろん手だけをレンタルするという都合のいい話はないから、生きた猫をレンタルすることになる。あっ、「生き物にレンタルとは何たることだ」と叱られそうなので、「猫を雇う」と訂正しておきたい。

 「猫の手も借りたい」と嘆いている人にも「ほぼサル」メールが届いているかもしれない。大いにありうることだ。「ほぼサル」に失敬な! と怒りながら、一方でご自身は人間の仕事を猫の手で何とかしようと考えている。「猫の手も借りたい」というのも、ある意味で人間に失礼な話ではある。一般的にサルのほうが猫よりもIQが高いらしいので、猫の手を借りたい職場の仕事は、「ほぼサルの軽作業」よりもカンタンな超軽作業なのに違いない。

 そこで妙案がある。軽作業であれ超軽作業であれ、いっそのこと思い切って人間をリストラしてみてはどうか。そして、猫とサルによる作業コラボレーションを実験してみるのである(「犬猿の仲」ではないから大丈夫だろう)。猫の手はだいぶ昔からニーズがあるようだから、あとは「ほぼサル軽作業」をサルができさえすれば、コラボは成功する。そうすると人件費はまったくいらなくなる。やがて世の中は、猫の手とサルだけでこなせるカンタンな仕事で溢れるようになる。

 ちょっと待った! リストラには断固反対! こうおっしゃる方がいるかもしれない。それなら、さらなる妙案がある。人間と猫、人間とサルのワークシェアリングをすればいいのだ。この制度を採用すれば、バカにされそうな「カンタンな仕事」を「ほぼカンタンな仕事」にグレードアップすることもできる。

 受注するにせよ発注するにせよ、カンタンな仕事にはタブーがつきまとうものである。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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