コマーシャルの変化(へんげ)

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 制作意図は大まじめなのだろうが、ついつい笑ったり呆れたりするテレビコマーシャルがある。なかでも「変化物(へんげもの)」には失笑してしまう。いや、失笑が失礼なら、徒然なるままにアップするブログのネタを提供してくれる、と言い直そう。

 変化物は、最初に人物が実体とは違う化身として登場し、30秒後に本性を現わすという構造をもつ。最近では武富士のコマーシャルで内田有紀が化身の役を演じている。内田は、誰がどう見たってフローリストである。そう、花屋さんなのである。男性客に対して笑顔で「いらっしゃいませ」と言ってるのだから、花を買いに来た人ではなく、花屋にいて花を売る人なのだ。とても他の職業に就いているという設定ではない。お客である男性は「彼女の部屋を花でいっぱいにしたい」とか何とか言って、花が所狭しと咲き誇る部屋をイメージする。

 内田は「かしこまりました」と応じる(ほら、やっぱり花屋だ)。大まじめなコマーシャルなので、お笑い芸人のように「かしこ、かしこまりました、かしこ~」などとふざけない。だが、相手のニーズに「かしこまりました」とイエスの返事をしておきながら、内田が差し出すのはサッカーボールくらいの大きさに揃えた花。男性客が「部屋じゅういっぱい」と希望を伝え、なおかつ内田も「かしこまりました」と返事したにもかかわらず、いっぱいとは程遠い両手サイズの花を手向けたのだ。もちろん彼はそのギャップに「えっ?」と驚く。いや、彼だけでなく、視聴者も驚く。「これって、顧客不満足じゃないの!?」

☆ ☆ ☆

 ここで終われば「変化物コマーシャル」とは呼べないが、話は続く。彼の「えっ?」という反応にまったく動じる様子もなく、内田は続ける。「この花、確かな計画性という花言葉があります。ムリしすぎちゃダメですよ。自分に合った計画を立ててくださいね」てなことを平然と言ってのける。「確かな計画性」―いやはや、現実味を帯びた、夢のない花言葉ではある。それにしても、失礼なフローリストではないか。「ムリしすぎちゃダメ」は上からの目線。おまけに「自分に合った計画」は安月給のサラリーマンと決めかかっているようでもある。男性は、もしかすると、大富豪の息子かもしれないのに・・・・・・。

 しかし、そうではなさそうで、内田は眼力のある美人フローリストのようである。そして彼は「このほうが彼女も喜ぶかも・・・・・・」と内田の提案を受け入れる(ものすごく素直な男性だ)。彼の彼女は「確かな計画性」という花言葉に小躍りするタイプなのだろう。まあ、それもあるかもしれない。

 いよいよコマーシャルのクロージングだ。冒頭の「いらっしゃいませ」を発したときと同じ笑みをたたえて、内田は「ありがとうございました」と客を見送る。そして、最後の最後に(たぶん客が次の角を曲がって消えた頃に)、「 た、け、ふ、じ~」と口ずさむのだ。この瞬間、「花屋と違うんかい!」とツッコミが入ってしまいそう。そうなのだ、ここにきて内田の実体が、武富士の社員か身内か、あるいは何らかのステークホルダー(利害関係者)だということが判明する。フローリストは化身だったのである。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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