週刊イタリア紀行No.54 「ローマ(12) アリヴェデルチ、ローマ」

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 通りの名もわからない、場所も定かではない。名所であれ無名の街角であれ、ぼくは歩きカメラを構え、時々バールに入って地図を確認する。写真ファイルを見ていると、まったく思い出せない光景が、まるで勝手に撮り収められたかのように現れてくる。これはローマに限った話ではない。自分の記憶と照合できない対象―珍しいもの、おもしろいもの、落ち着いて見えるもの、何となくいいもの―は無意識のうちに写真として取り込んでしまっている。

 アルケオバスでアッピア街道を二周したあと、バールでエスプレッソ。アパートに戻ってしばらくリフレッシュしてから再度外出した。目指す先は、市内を眺望できるジャニコロの丘。数年前、ローマ在住の知人に車で連れてきてもらった。晴天に恵まれ、ローマ市街地とその彼方に広がる郊外を一望して感嘆した。その時の再現を目論んだ。アパートを出てサンピエトロ広場を横切り、さらに裏道の坂を上って遊歩道を進むこと小一時間、やっと丘の上に到着した。しばらくして大きな虹が出た。

 ローマを唄う、バラード調で少しペーソスのきいたカンツォーネがある。"Arrivederci, Roma"(アリヴェデルチ、ローマ)という題名だ。「さようなら、ローマ」。語りの出だしがあって、そのあと"♪Arrivederci, Roma. Goodbye, au revoir"と唄い始める。イタリア語と英語とフランス語の「さようなら」を並べている。テーマは「さようなら」だが、想い出を記憶にとどめて「あなた(ローマ)のことを決して忘れない」と締めくくる。

☆ ☆ ☆

P1020198.JPG ヴァチカン地区クレシェンツィオ通りに面した建物。大きな門を入ると、この敷地の一角に一週間快適に滞在したアパートがある。どこに行くにも便利なロケーションだった。

 出発の日の朝7時すぎ。アパートの責任者のフランチェスコが、とても上品なお父さんを伴って見送りにきてくれた。銀行家でシスティーナ礼拝堂の仕事にも関与しているそうだ。システィーナを紹介するポジ写真が入ったプレゼンテーションキットをプレゼントしてくれた。

 旅から帰って再び旅をする。帰った直後に旅をして、半年後にまた旅をする。そして、ローマの旅から一年半経った今、また旅をしている。一回の旅で、繰り返し何度も記憶の旅を楽しめる。そして、そのつど「アリヴェデルチ、ローマ。グッバイ、オルヴォワー」と口ずさむ。トレヴィの泉で硬貨を投げてこなかったが、ぼくは再びローマに「戻れる」だろうか。 《ローマ完》 

ローマの最終回、そして「週刊イタリア紀行」の最終回です。訪れながらもまだ取り上げていないイタリアの都市もあります。これからは週刊にはならないかもしれませんが、気の向くまま折を見て写真を選び文章にし続ける予定です。

☆ ☆ ☆

P1020164.JPG P1020167.JPG P1020174.JPG左)ぼくの写真にはこの種の構図が多い。(中央)遠近法に忠実な、こんな無名の通りも気に入っている。(右)ジャニコロの遊歩道へ。これはガリバルディの騎馬像だろうか(やや無責任)。

P1020178.JPG P1020175.JPGヴァチカンから南へ1.5km行くと、そこがジャニコロの丘。上りはきつく散歩感覚どころではない。(左)この日の夕景は幻想的に刻一刻変化した。(右)ジャニコロの丘はローマ市民の散歩道になっている。P1020181.JPGP1020177.JPG

遊歩道を上りつめると小高い丘のガリバルディ広場に出る。ここが絶好の展望位置。前に来たときのパノラマに惹かれて、再び一望する街。旅立ちの前日、黄昏前の雨上がりの空にローマからのプレゼント。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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