問いと答えの「真剣な関係」

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 面接でも会議でも対話でもいい。面接ならインタビューアーが、会議ならメンバーの一人が、対話ならいずれか一方が、相手や別の誰かに質問する。お愛想で、たとえば「元気?」などと尋ねる場合を例外として、それぞれがある意図をもって問いを発していることは間違いない。「なぜ当社を希望したのか?」は理由を聞いている。「問い合わせは何件か?」は事実を聞いている。

 おなじみの《5W1H》は文章を構成したり企画を起こしたりするときの基本。これらWHO、WHAT、WHEN、WHERE、WHY、HOWは質問と応答の関係にも当てはまる。これに「PはQか?」という、イエスかノーかで答える質問と、「PかQのいずれか?」という二者択一で答える質問を加えれば、すべての質問パターンが出揃う。「その愛犬の名前は?」と尋ねたのに、「わたし? ヨーコで~す」と返してしまったら、聞いた方の意図からそれてしまう。但し、その愛犬に付けられた名前が《わたし? ヨーコで~す》ならば的確な答えになっている。

 「PはQか?」という二者択一型で問うているのに、「いろんな考え方があって、たとえばですね・・・」と切り出した瞬間、もはや答えになっていない。「はい(いいえ)」で即答し、許されるなら理由を述べればよい。「Aランチ? それともBランチ?」とご馳走してくれる相手が希望を聞いてくれたのに、「お任せします」は的確ではない。意図があって尋ねたのに、期待通りの答えが得られない―対話習慣に乏しく、質疑応答を御座なりに済ましているこの国では日常茶飯事の体験である。

☆ ☆ ☆

 今朝のテレビ。民主党の専門家が新型インフルエンザのテーマのもとゲスト出演していた。聞きたいことを街で拾ってきて質問する。「新型インフルエンザのワクチンはどこで打てるのか?」と尋ねる。5W1HのうちのWHEREである。ところが、その議員はWHENを答えたのである―「若干遅れるかもしれませんが、本日から打てるよう手配をしています」。「いつから」とは聞いていない。場所を聞いているのだ。「場所? 病院に決まっている」とでも思ったのだろうか。「病院で打てるのはわかっているけれど、どこの病院でも、たとえば小さな医院でも打てるのか」と聞いている意図を汲んであげなければならない。まさか居酒屋や駅の構内で打ってくれると期待して聞くはずがない。

 「月曜日と火曜日にどれだけ仕事がはかどったのか?」と尋ねてみた。仕事については暗黙の了解があるので、これはHOWの問いである。しかし返ってきた答えは「水曜日にXXをやるつもりです」だった。この応答は質問に対する二重の「背信行為」になっている。月曜日と火曜日から別の曜日にWHENを転化し、おまけに聞かれもしていないWHATで答えたのである。「最近、社会の動きであなたが特に気づいたことは?」に対して、「先週YYという本を読みまして、社会現象としてのZZが書かれていました」と答えてしまう無神経。WHATの意図に答えてはいるが、「あなたが気づいたこと」を知りたいのであって、「本に書かれていたこと」を聞いたのではない。

 アタマの悪さも若干影響しているのだろうが、的外れの最大の理由は、(1)集中して質問を聞いていないこと、(2)不都合から逃げることの二つである。つまり、「いい加減」と「ずるさ」なのだ。こんなふうに対話を右から左へと流す習慣がすっかり身についてしまっている。講演会なら適当に話を聞き流してもいいだろうが、少人数の集まりや一対一のコミュニケーションでこんな体(てい)たらくでは能力と姿勢を疑われてしまう。質問一つで、答える人間が「ある程度」わかってしまうのだ。質疑応答を真剣勝負だと見なしている硬派なぼくの回りから、厳しい質問を毛嫌いする「ゆるキャラ人間」がどんどん消えていく。それで別に困ったり寂しくなったりしているわけではないが・・・・・・。

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プロフィール

岡野勝志(おかのかつし)
1951年大阪生まれ

企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長
企画アイディエーター
岡野塾主宰

ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。
マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人材の課題に対して、「即答即決アイディエーティング」をおこなっている。

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