大阪の寒さなどたかが知れている。明日は冷え込むと天気予報が報じるので備えて外出すれば、何のことはない、日向ではポカポカしていたりする。講演や研修で全国に赴くが、冬場はだいたいシーズンオフになる。とりわけ雪国への真冬の出張はほとんどない。山陰や北陸で豪雪に見舞われて列車遅れを経験した程度だろうか。ぼくは厳冬の雪降る北国をまったく知らないのである。
ぼくがもっとも凍てついたのは3月上旬のウィーンの朝だ。前日の午後5時頃に街に入った。時差のせいか感覚が鈍っていたのだろう、さほど寒さを感じることなく街をうろついていた。ところが、翌朝、ホテルの窓外の光景が白へと一変していた。ビュッフェで腹ごしらえした後に外に出てみたら、昨夜の気温とはまったく違う。ありったけの服を重ね着して万全の防寒態勢で地下鉄駅へ向かった。
目指したのは8駅か9駅西南西方向に位置する、ハプスブルク王朝の離宮「シェーンブルン宮殿」。同名の地下鉄駅を降りて雪道を歩く。宮殿の入口までほんの数分なのだが、この時に感じた凍えがぼくの生涯一番である。ウィーンは北緯43度の札幌より5度も北に位置する。つまり、北海道最北端よりもさらに北である。にもかかわらず、3月のウィーンの平均気温は3.5℃(最低)、10.2℃(最高)で、札幌の-4.0℃(最低)、4.0℃(最高)よりもはるかに暖かい。しかし、あの凍えようは尋常ではなかった。
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シェーンブルンとはドイツ語で「美しい泉」を意味する。マリア・テレジアの時代の1693年に完成している。この宮殿内では美しく花が咲き誇るので、ほとんどの写真や絵葉書は春先から夏にかけて撮影しているのだろう。実際、手元に残っている入場券には緑に囲まれた宮殿が写っている。それはそうだ、ここは「夏の離宮」なのだから。しかし、ぼくにとってシェーンブルン宮殿はすっかり冬のイメージと連動してしまっているかのようだ。
凍てついた分、宮殿内のカフェで飲んだミルクたっぷりのメランジェ(ウィーン版カプチーノ)は温かくて格別にうまかった。
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(左)早朝、ホテルの窓を開けてみた。透明な冷気に触れると同時に、一変した冬景色が目に飛び込んできた。
(右)地下鉄駅への道すがら。歩道に雪は積もっていないが、静けさと相まって突き刺すような寒さが襲ってくる。
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(左)宮殿の入口。
(左)噴水も花壇も真っ白になっている宮殿の裏手。小高い丘の上にグロリエッテがある。ここにはレストランとカフェがあるらしく、また屋上から俯瞰する宮殿方面の景観が絶景らしい。さすがにこの雪では歩けない。夏場に坂を上がった人は、猛暑でばてたと言う。寒すぎるのも暑すぎるのも困る。



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