第6講 ロジカルスキル入門 07

 

ロジカルトークのすすめ

 

両極からグレーゾーンが見える

 「体調不良かも」と自己判断できるためには、これに先立って「体調良好」が体験されている、あるいはその概念が認識できている必要があります。ある理想なり解決状況がイメージされていなければ、問題を問題として特定することはできません。異常は正常感覚によって、混沌は秩序感覚によって察知されます。

 決済は可否のいずれかです。視座を両極に置いてみると、中間にあるグレーゾーンが勝手に見えてきます。人間の頭髪は25万本あると言われています。その対極は0本です。25万本と0本を対比させる時点で、その間の24万9999本~1本をすべて想像することができます。

 ロジカルに話すためには、グレーゾーンをしばし棚上げにして、両極発想に立つのです。イエスかノーか、スイッチならONOFFか。この発想から中間の意見や折衷案が見えてくるのです。

 

段階を踏んで定義を工夫しよう

 いきなり詳細な定義を試みないこと。辞書のような定義をしても意味が明快になるとはかぎりません。また、定義を単なることばの言い換えで済ましてもいけません。定義には説明という要素も多分にあるのです。たとえば、豊かさについて定義しようとすれば、①「豊かさとは尊ぶべき価値観である」、②「尊ぶべき価値観ならば、国や社会で共有すべきである」・・・・・・などと段階を踏みます。一気に説明するのではなく、一段階ずつ了解を得ていくのです。

 

Whyと聴かれたらBecauseで返すのがマナー

 Becauseの質を見れば、その人が理性的に話しているか、それとも適当な思いつきでおざなりに話しているかが即座にわかるものです。Whyと聞かれて的確なBecauseで答えられないときは、見栄を張ったり背伸びしたりせずに、素朴に「わからない」と応答すべきです。但し、「わからない」は負けを認めることなので、主張を取り下げなければなりません。理由なき主張は主張の条件を満たさないのです。

 Why-Becauseでもう一つたいせつなことがあります。Becauseで答える表現階層は、Whyで尋ねられた表現階層より低くなければならないという点です。たとえば「なぜ学校でいじめという現象が起こるのでしょうか?」に対して、「それは、社会に問題があるからです」と答えるのはこの条件を満たしていません。Whyの表現や概念よりもBecauseの表現や概念のほうが抽象的で大きいからです。

 

主張は命題型で唱えよう

 価値観の意見なら「~である」、ポリシーの意見なら「~すべきである」と、いずれも「解答の含まれた命題」として主張を明示するのが好ましい。もちろん、それにともなって加えられる説明も各論的でなければなりません。

 「公共の場での煙害には即刻解決策を講じるべきです」というのは自分の答えを含めた命題型主張になっています。この主張の論拠を「なぜなら、いろんな問題が露呈しているからです」などとしてしまうと、もはや主張は成り立ちません。「いろんな問題」と言っても、何一つ説明が成されたことにはなりませんから。

 

小分けにしたり因数分解にしたりして話そう

 「わたしたちは立派な人間を目指すべきです」というような主張をして知らん顔している人がいます。そんなことわかりきったことです。重要なのは「立派な人間」という大きな概念をもっと小さな要素に落とし込むことなのです。たとえば「精神性が高く、技術力を備え、健康体である人」という具合に。どこかで聞いたことがあるでしょうが、「心技体」ですね。

 「人間にはさまざまな欲求があります」も不親切な主張です。そもそも「いろいろな」とか「さまざまな」は何も言っていないのに等しいのです。たとえばマズローの法則などを引用して、「人間はまず生理的欲求に始まり、安全の欲求、社会的欲求、自我の欲求へと続き、究極として自己実現の欲求を満たそうとします」というふうに欲求を描写するだけで親切な主張になります。権威の引用の信憑性はともかく、小分けはロジカルトークでは有効な決定打になってくれるものです。

 

ナビゲーショントークの必須道具はナンバリングとラベリング

 小分けをしたら番号をつける(ナンバリング)、番号をつけたら、一番言いたいことを見出しとして掲げる(ラベリング)。この二つをよく覚えておいてください。三つくらいの論点や項目を訴求するときは、1、2、3と番号をつけ、それぞれに見出しをつけるのです。混沌トークから脱皮して整頓された話し方ができるようになるでしょう。

 

《続く》
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