第5講 スピーチとエッセイの技法10
エッセイの基本(その3)
『スピーチとエッセイの技法』もいよいよ今日が最後。言い残したことを振り返ってアトランダムに話すことにしましょう。
11 分解・分類
テーマ(主題)は小さければ小さいほど書きやすくなります。思い切って絞り込みましょう。どうしても大きいテーマを扱わねばならないときは、いくつかのキーワードに因数分解してみることです。総論、抽象概念、大言壮語は理解の敵です。一般的に部分は全体よりつねにわかりやすいのです。
12 情報の優先順位
書き始めたら終わらねばなりません。文章を延々と書き続けることはできないのです。もし紙数や文字数に制限がなく、暇を持て余すほどの時間があれば、人は駄文ばかり綴るようになるでしょう。
練習文であれ読まれるのを想定した原稿であれ、一つのエッセイの制限の中では、言いたいことのすべてをあれもこれもと網羅することはできません。何を書くか、何に絞って書くかも重要ですが、まずは不要な情報を書かないと意識すべきです。厳選情報のみを、しかるべき優先順に盛り込むのです。
13 要点から詳細へ
文章が少しでも理解可能域から外れると、ほとんどの読み手はイライラするものです。手取り足取りの分かりやすさは不要ですが、結論を先送りし過ぎると焦れてしまいます。
テーマ"X"の話に到るまで、まったくそのことについて触れないのは不親切というものです。詳細のハイライトなりエッセンスをうまくワンポイントメッセージで要点化すること。
14 起承転結を考える
漢詩の組み立て方である起承転結。初めの句で言い起こし、第二句で受け、第三句でその意を転じ、終わりの句で全体を結ぶ。転じて。物事の順序に用い、スピーチや文章構成のお手本とされています。
しかし、これはあくまでも芸術文の組み立て方法なのです。何でもかんでも起承転結の構成で済ませることはできません。これは実務文には適さないことを知っておいてください。
15 結論先行主義でいいのか
エッセイを書くときも、三角形型の構成より逆三角形の、結論先出しが定説になってしまっています。しかし、必ずしもそうではありません。「結論」ということばで片付けてしまうと、誤解が生じます。
もっと幅広く、アウトライン、プロット、仕掛け、情報提供、目次、コンセプトなどと考えてみることです。結論先行型には長短があります。玄関開けたらすぐ床の間というのも考えものです。また、結論が分かってしまうと、それ以後の文章への関心が薄れる場合もあります。
最後になりますが、話し切れなかった項目を挙げておきます。これらについてはいくらでも語れますが、留意すべきこととしてアタマに入れておいてもらえれば幸いです。
A 見た目のスタイルを整える
見出し、小見出しの表現と本文の整合性
適度な改行、適度な段落(パラグラフ)の長さ
スペース(本文の可読性)
箇条書きは三つ、四つが理想(あまり項目が多いと分かりづらくなる)
B 筋の通った説得
因果関係の正しい文章
裏付け、例証、理由を織り込む
読み手の立場から読み直す
主観と客観のバランス、主述関係の整合性
C こなれたメッセージ
キーワード、キーセンテンスを決める
修飾語・形容詞を多用しない
適切な読点と読みやすさ
迷ったら下位概念で書く
D 推敲・リライト
何について書き始めたのかを忘れない
メタボな文章よりもダイエットしてスリムな文章
自然な語感を漂わせる
事実のアップデート
《終わり》